葉月

エゴイストの葉月のレビュー・感想・評価

エゴイスト(2023年製作の映画)
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れっきとしたクィア映画であり、いわゆる”普通”との差や壁にぶつかる苦悩を描く境地は既に超えていて、ただひたすらに愛することの本質を突いていく、そんな映画でした。

ただ、法的な”家族”になれないが故の行動だと思うけど、浩輔の生々しい金銭的支援による”献身愛”には危なさしか感じず、なんなら少し不快とも思ってしまった。一方的で、受け取る側の感じる無力さや居た堪れなさを考えずに押し付けて、受け取ってもらったら、一時的でしかない報われた思いに耽る。私自身シスヘテロですが、結婚とか法的契約を結ぶことに、できれば必要性を感じたくない立場なので、その解決法しかないのが辛かった。

浩輔が少しでも救われたのは、間違いなく龍太の母の赦しと応えがあったからで、「あなたがそう思う自信がなくても、受け取る私たちがそうだと思うなら、それは愛(ニュアンス)」という言葉の強大さが必須だったと思う。

分かち合える犠牲や精神の疲弊を伴ってもたらされるエゴは、重くて、苦しいほどに温かい。

鈴木亮平の圧巻の体現力、宮沢氷魚の溢れ出る悪魔的魅力、阿川佐和子のリアルな包容力。体格差も可愛かった。

この主題をゲイの人々を中心にして描いたのは新鮮で、日本の映像作品として進歩的。そして、想像よりも老若男女、おそらく性的指向や恋愛観もバラバラな人々と、劇場をほぼ満員にして観れたのはなかなかいい体験でした。
葉月

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