JunichiOoya

HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

3.0
ダ○チワイフ(私の世代ではそう呼び慣わしていた)を偏愛する愛媛出身兵頭さんのパワフルかつ虚無的な日常を紹介するドキュメンタリー。

彼の自宅は亡父の保険金で買ったという埼玉八潮市の建売住宅(25坪650万、とか言ってた)で、そこで「八潮秘宝館」という魑魅魍魎スペースを運営している。
何体もの人形が禍々しい出立ちで飾られ、中には兵頭さんが「ガワ」を剥いでスチールの骨組みだけになったのも…。

兵頭さんは50歳手前でいくつも持病を抱える、目の光に相当なヤバさを湛えるハゲデブチビ(とご本人が仰る)のおっさん。
若い頃はダ○チワイフとの交合シーンを動画にあげ続ける相当な変人(かつ有名人)だったらしい。

そもそも写真を撮る人(写真家と言って良いのかどうか不明)なんだろうけど、(不謹慎かもしれないけどマキエマキさんとかちょっと連想した)徹底的に自身の趣味のみに突っ走るアナキストとお見受けする。

靖国に出かけてダ○チワイフに従軍看護婦のカッコさせて「靖国にはさまざまな英霊が祀られているが戦場で散った看護婦さんは無視されてるんだ」とかなんとか…。
アナーキーだわ。

そもそもダ○チワイフ映画というと、田中登『㊙︎色情めす市場』是枝裕和『空気人形』なんですよね、私の場合。
タナダユキ『ロマンスドール』沖田修一『南極料理人』(いや、これは南極違いか…)なんてのも。

でも兵頭さんには従来の映画にある「情緒」は微塵も感じられなくて、ひたすら虚無、虚無、虚無。それもパワフルな虚無。
まあ、あれですね、奥崎謙三ぽくもある。

残念ながら撮り手の力量が物足りなくて、映画としてはただ冗長な絵面の連続になってるのは残念だけど。

あと、絶対に忘れられないのは岩手北上(今は花巻かな?)の喜久盛(きくざかり)酒造が登場すること。喜久盛の藤村社長と兵頭さんがどうして仲良くなったのか、映画で説明はなかったけど、この蔵の有名銘柄「タクシードライバー」の命名及びラベルデザインをやったのは高橋ヨシキさん(川瀬陽太さんの『激怒』!)ですからね。
ああ、久しぶりに「タクシードライバー」を熱燗でやりたくなったわ。
JunichiOoya

JunichiOoya