こなつ

そばかすのこなつのレビュー・感想・評価

そばかす(2022年製作の映画)
3.8
アカデミー作品「ドライブマイカー」で、数々の賞を獲得し、一躍注目された三浦透子の単独初主演作。

恋愛をしたことがない、恋愛をしたいという気持ちが湧かない、だからって寂しくないし、ひとりでも十分幸せだ。

今の若い人達はかなり共感する人が多いかもしれないと思うのは、周りを見渡すと結婚していない若い人があまりに多い。我が家も同じ。三浦透子演じる蘇畑佳純と同年代の我が家の三人(長男・次男・長女)の子供達も全く結婚する気配がない。

そんな家庭事情の中、結婚しない若い人達は何を考え、どのように生きていきたいのか、かなりリアルティのある感情を持ちながらの鑑賞になった。

物語は、チェリストの夢を諦め、東京から実家に戻った蘇畑佳純は、単調な生活ながらも楽しく過ごしている。「物心ついた時から恋をしたことがない、この先もしない、恋愛したいという気持ちがわからない、だからって寂しくないし、一人でも十分幸せだ」そういう彼女だが、母親からはプレッシャーをかけられ、男友達だと思って気楽に付き合っていた男性からは告白され、自分の気持ちを理解してくれる人は少ない。恋する気持ちは知らなくてもひとりぼっちじゃない、大変なことはあるけれど大丈夫。不器用でも一生懸命に今を生きるヒロイン。

ヒロイン佳純の個性的なキャラクター、繊細で不器用な気持ちを三浦透子が丁寧に演じていて素晴らしかった。友人の真帆を演じた前田敦子は、観る作品の度にその演技力がグレードアップされていて凄い。友情出演の北村匠海は、少ない出番ながら存在感のある俳優だとあらためて感じる。

私が結婚した頃は、良い年してまだ結婚していないと身体か心に問題あるんじゃないかと囁かれたり、周りがどんどん結婚していく中、孤立したりしたように思う。それに比べれば人それぞれの価値観が尊重される今の若い人達が羨ましい。

自分の思うように生きればいい、自分の人生だから。そうは言っても親としては、彼らがそれで幸せなのか、心を休める場所があるのか、心配は尽きない。

劇中のセリフ「恋人はいないの?」「作る努力をしなさい!」なんて今どき面と向かって子供に言う親がいるのだろうか、ましてやお見合いを勝手にセッティングして騙して連れていくなんて考えられない。そう思っているうちはまだ親として気持ちに余裕があるのだろうと自分を振り返った。

年末から年始にかけて、一人暮らしをしている子供達も帰ってきて、家族5人集まる。「また今年も誰も結婚しなかったね」なんて言うのはきっと主人の方で、孫の話を楽しそうにする友人が羨ましい年頃?らしい。

もう観たかもしれないが、子供達にもこの映画を薦めてみよう。佳純に共感するのか、自分とは違うと思うのか、ちょっと聞いてみたい気がする。
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