いの

わたしの見ている世界が全てのいののレビュー・感想・評価

4.1
映画鑑賞能力が低いので間違っているかもしれないけれど、こういうのが令和の映画なんだろうなぁって思う。これが昭和の映画なら、しみったれた映画で4兄妹泥沼の話とかになりそうだし、バブル崩壊後の平成ならばもしかしたらもっとどぎつい話になったのかもしれない。そういったところから今作は違うところにあるように思う。


(色味と称してよいのかはわからないけど)映画の色味も心に残る。ベースは、青白&黄色。MVやファンタジーにもなりそうな青白い空や風景。そして黄色は至るところに。病院内のエレベーターとか、お店の照明とか。鮮やかな黄色だったり、あたたかみのある黄色だったり。その色味もこの映画を支えているように感じる。


両親が残したお店を売るのか否か。4兄妹。遥風は6年ぶりに実家に帰ってきて、ある意味ひっかきまわしている。ほかの3人はいつ遥風に「あんたいつ帰るの?(この実家から出ていくの?)」って捨て台詞吐くのかと思いながらみていた。遥風はいつそれを言われてしまうのだろうかと。


娘ちゃんがお店を訪れ、母と娘が向き合って(でも同じテーブルじゃなくて)うどんを食べる場面も好き。娘ちゃんの最後のセリフ「おいしい」がじーんと心にしみいる。長兄が、地元のお客さんとどう接していたかを示す数々の場面も、この映画をとても豊かなものにしていると思う。


DVDに収録されていたドキュメンタリーで、最後の場面をどうするのか、撮影前日にもまだ迷っているということを監督自身が語っていたけれども、その最後の場面も、なんかいい。言葉にならないその先に。さあ、ここからあらたな一歩がはじまるのだ。迷うことからはじまるのだ。そんなふうにおもえる
いの

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