arimasou16

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのarimasou16のレビュー・感想・評価

3.5
数年前に日本語訳を読んだことがあります。映画向きの題材でないと思ったのでどう映画になるのかな?と思って、見に来ました。

そんな客来るのかな?と思ったら、公開一週目とあって狭いスクリーンながら、ほぼ満席。

原作読んでるときも思いましたけど、横文字の人名って覚えにくいんですよね。しかも、呼び方を姓と名が、たまにひっくり返るので余計分かりにくい…

序盤は、原作読んでながら話がどんどん進むので、訳分らないないと思いながら見てました。途中から話の骨格見たいのがはっきりしてきて、落ち着いて見れます。

ワインスタインという悪人一人の問題でなく、性被害は立証するのが難しく、弁護士の手数料も報酬割合が大きいことだけに、示談となりやすい。その結果、証拠が奪われ、僅かな金とともに被害者は生涯に渡って心に傷を負うこととなり、公言することを著しく制限される。というシステムが悪なのよ!と訴えていたのが印象的でした。

原作読んだときは、こういう感想を持たなかったですね。

あと、ペンタゴン・ペーパーズもそうでしたけど、変にドラマチック、情緒的に描くことなく、物語というより、再現ドラマみたいな演出が良かったです。

新聞記者の苦労、証言者の葛藤は凄く伝わってきます。それぞれの女性が懸命に戦ってる姿に涙流す人はいると思います。ただ、ワインスタインへの刑罰が下されるシーン、その後の転落が描かれたりしてないので、よくある復讐劇を見るようなカタルシスはないです。

以下、私の独り言

映画、ドラマどちらも「新聞記者」を評価してないので、私はこれで良いと思ってます。自分たちは絶対に正しいんだ!とフィクションに逃げて仲間内で叫んでるのに比べたら、何とNYタイムズは真摯、公平であるか!

ワインスタインにも、2日の発言、反論する時間を与えていますし、記事の裏付けを粘り強く取ってきました。

20年以上前に、「性犯罪被害にあうということ」というタイトルで被害者自身が顔を表紙に載せ、実名で本を出し事がありました。その時の社会、警察、知人、家庭の反応など克明に記されていました。その9年ぐらいあとにブラックボックスというタイトルで、政治家と親交のある記者に強姦された女性の告白本が出ました。

政治的な側面からその被害者は語られることが多いですが、その本自体は、性被害者に優しくない日本と言うことが、9年前と何も変わってないことが記されていました。

metoo以降、フェミニズムを応援する映画が増えました。現実でも政治家、企業トップ、幹部の女性蔑視発言による引責辞任が度々ありました。

日本も変わっていかなければいけないと、こういう映画を見ると強く感じます。それとともに、特にマスコミの方々はNYタイムズのように裏取りをきちんとして取材先は元より、追及する対象さえも感情論や善悪論で語るのではなく、公平な報道を心がけてほしいです。

結論ありきの適当な言論が目立つ気がします。そして、一人の悪人がいたと事件を矮小化するのではなく、悪人とさせてしまったシステムの問題にまで切り込んでもらいたいです。でなければ、マスメディア、ジャーナリストの存在意義が問われます。

metoo運動は、特定の人物や団体を糾弾することよりも、ゴールとしては男女差別を生み出してしまう社会構造の変革、システムの改修だと思ってます。その為にも、誰が言っている、誰が言われてるといったことで良し悪しを決めずに、また他の問題をあたかも性差別の問題にすり替えたりすることなく、進めていきたいものです。
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