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SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのdojiのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

彼女たちが記者に打ち明けるとき、遠巻きのショットからカットが切り替わることによって表情を捉えるような編集が印象的で、まるで社会のなかの名もなき存在、ないことにされてしまった声に耳を傾けていく記者たちの姿そのもののようだった。

彼女たちの生活を感じさせるさりげない描写も、登場人物たちを立体的にしている。診断を受ける病室や家族と過ごす家の中のシーンなど、傷を負ったあとの人生がたしかな手触りのようなものとして伝わってきて、それがひとりの男によって常に大きな影ようなものをしたがえて生きていかざるをおえなかった、彼女たちの時間を思ってしまった。

記者たちの描写もどれもすばらしく、キャリー・マリガンとゾーイ・カザンの仕事の合間に挟み込まれる生活の時間の描写がどれもいい。仕事と人生があたりまえにそこにあって、そこに情熱を注ぎ込む彼女たちの姿がたくましくて憧れてしまう。

ひとつの記事を仕上げるのに時間と頭と足を使い、何度も議論しながら文章を練り上げていく。関わるすべてのひとに使命感と責任感、そして矜持を感じさせて、みていてうらやましくそしてまぶしい気持ちがした。尊敬による一連托生が生まれたチームは美しいなと思う。書き出しや構成に悩んだり、デスクによる校正が入って、編集長が的確な指示とアシストを加えていく。パトリシア・クラークソンも適役だと思う。気持ちを入れ込み過ぎてしまって、ゾーイと同じタイミングで号泣してしまった。

ドキュメンタリー的な手法や実在の人物をフィクションに取り込むバランスも見事で、世界を変えることになった一連のムーブメントを克明に刻んだ傑作だと思う。ぼくは書く人の映画によわい。『スポットライト』と並ぶ忘れられない一本だった。

キャリー・マリガンの夫役のトム・ペルフリー、『オザーク』でもそうだったけれどマスキュリンな感じがなくて、あんなひとになりたいなといつも思う。
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