こなつ

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのこなつのレビュー・感想・評価

4.0
実話に基づく衝撃のスクープサスペンス映画。

#MeToo運動「私も被害者である」が、世界へ広がるきっかけとなった、2017年ニューヨーク・タイムズ紙による性暴力報道を描いている。

ニューヨーク・タイムズの女性記者、ミーガン・トゥーイーとジュディ・カンターが、大物映画プロデューサーのワインスタインが数十年に渡って続けてきた女優や従業員に対する性的暴行について取材を始めるが、被害女性の多くは示談に応じていたり、証言をすれば訴えられるという恐怖や当時のトラウマから声を上げられずにいた。問題の本質は、業界の隠蔽体質にあると気付いた記者たちは、各方面から圧力がかかったり妨害を受けながらも真実を追い求めて奔走する。

ミーガン・トゥーイーは、当時妊娠中であり、ジュディ・カンターは、二人の子供の母親という、それぞれの私生活にもフォーカスして、女性監督による女性的視点で描かれたジャーナリスト映画という面白さがあった。

ワインスタインというのは、とんでもない男だった。

証拠が不十分、事件性が薄いなどと女性の訴えにも動かない警察、夢を奪っただけでなく、口止め料を支払って告白させないようにする弁護士、監督や俳優達も見て見ぬ振りをする、加害者ワインスタインが援護され、組織的に守られているという構図にはただただ驚き、腹立たしい。

女性が性的虐待を受けたというレッテルに怯えて声を上げられない社会的背景もまた大きな問題だと感じた。

実名での告白に応じた証言者たちの勇気を讃えたい。

性暴力に対する社会全体の認識の甘さが露呈したこの事件は、氷山の一角なのだろう。

会社は潰れ、妻から離婚され、地位も名誉も失って、ワインスタインは現在禁固23年の刑で服役中。それでも多くの女性が受けた傷は消えることはない。
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