りっく

雑魚どもよ、大志を抱け!のりっくのレビュー・感想・評価

雑魚どもよ、大志を抱け!(2023年製作の映画)
3.2
冒頭からある一家の様子が映し出されるが、兄は塾に行くなんて言ってないと親に歯向かい、妹はうるさいと注意されながらもピアノを引き続け、母は息子の声に耳を貸さず、父は目の前の家族の様子を気にもせず晩飯をせびる。

本作は見て見ぬふりをしてきた、聞こえぬふりをしてきたことに対してきちんと対峙し、子供たちなりにケジメをつける物語である。その主題を冒頭からきちんと描写し、それでいて子供たちが自転車を走らせながら一人また一人と仲間を集めていく様は、長廻しの効果も相まって家庭の閉塞感から解放される清々しさに満ち溢れている。

テイストは明らかに『スタンド・バイ・ミー』やスピルバーグ映画といった80年代のアメリカ映画を意識した作りであり、それを現代の視点から戯画化するバランスで進んでいく。だが、少年たちに待ち受ける問題や葛藤がいちいちステレオタイプで、さらに足立紳ならではの青春の熱さや青臭さが加わることで、作り手が題材に対してうまく距離感を測れていない印象を受けてしまう。
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