りっく

落穂拾いのりっくのレビュー・感想・評価

落穂拾い(2000年製作の映画)
3.9
アニエス・ヴァルダのドキュメンタリーが面白いのは、社会問題として問題提起し、結末ありきで取材し素材を繋いでいるのではなく、彼女の感性や主観も交えながら、より自由に様々な人間との出会い、そこから彼女も影響や感銘を受けている感動のようなものが伝わってくる点だ。

本作も例えばホームレスが私有地に入り残り物を盗むという社会問題として切り込むこともできるが、彼女はあえてミレーの「落穂拾い」のイメージを冒頭から植え付けることで、純粋に「拾う」という行為やシルエットそのものを切り口に、彼女自身が持つユーモアや映像センスも交えながら、まるで彼女とともに旅に同行しているような瑞々しい感性が味わえる。

それでいて、拾う側と拾われる側の暗黙の了解や法的な知見、人間としての器量や価値観、さらには昨今のSDGS的な部分に至るまできちんと浮かび上がらせている。そのバランス感覚が見事だ。
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