りっく

穴のりっくのレビュー・感想・評価

(1960年製作の映画)
4.1
無駄なものを削ぎ落とし、5人の囚人の穴掘りにすべてを集中させるストイックな演出。単純化された物語が、終始一貫一瞬のたるみもなく描き出されるのは、演出、構図、編集がこれしないという完璧さで実現される。

特に道具を収容された部屋の床に打ち付け続ける手元を長回しで捉える場面は、徐々にヒビが入っていき砕けていく様、道具と床がぶつかり合う鋭い金属音、そして叩き続けることにより疲労していく俳優の生身の身体による張り詰めた緊張感は素晴らしいの一言。

壁と囚人の具象的な戦いが、物質と人間の対立という形而上学的な深みすら獲得し、鋭利な音響処理も、音は物質の具体的な手応えがあると同時に、抽象的な恐怖に高められている。
りっく

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