スカポンタンバイク

Pearl パールのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.6
面白くは観たのだが、個人的にはそこまでではなかった。「X」の方が好きかな。

あの老婆の前日譚を作るという事では、今作はよくできていたと思う。映画の女優を夢見る少女がいかにしてテキサスの囚われ人になってしまったのかという悲劇の裏には、まさかジョン・クロフォードそっくりな母親がいたとは...。あんな家庭、いらんないよ。
また、一方でパール自身の人格自体にも問題があるという設定にしているのは、狂っていく様を描いた「ジョーカー」とも違い、環境のせいとも言い切れない感じになっていた。ただ、ここが個人的には一番引っかかった所で「夢見がちな少女」というのと「等身大で生きて変な所がある人」というのを混同して語っている感じがしてしまった。基本的にパールは不満を狂気に変えて、生き物を殺すという方向に向かっていくキャラクターなのだが、そうした時に「夢見がちな少女」の挫折を狂人になる火種にするというのは、安易というかズルいんじゃないかと思った。勿論、パールの前日譚としては、それは正しいのかもしれないが、その選択をしたために「夢見がちな少女」の方がほとんどおまけで、ダンスオーディションに向けて頑張るぞいっていうシーンがほとんどない。冒頭から「オズの魔法使」をやろうとしてるのがありありとしていたので、だったらもっとその夢心地な方にも注力してほしかった。
唯一あるダンスシーンは素晴らしかった。知見がほとんどない人間が精一杯やってる熱さと醜さ、気恥ずかしさに溢れていた。

ワンシーンワンシーンはどれも素晴らしかったので、個人的にはもう少し盛ってほしかったなぁという感じでしたね。