Punisher田中

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのPunisher田中のレビュー・感想・評価

4.7
アセクシャルな男の子・七森は大学で知り合った麦戸と共にぬいぐるみとしゃべるサークルである「ぬいぐるみサークル」略して""ぬいサー""と出会うのだった...


とても、とても繊細で優しい映画だった。
優しすぎるが故に、この世界で起こる事象の全てに干渉して傷を負ってしまう優しく繊細な人達。
自らの有害性に悩み、他人の持つ有害性に苦しみ続ける彼らの気持ちがぬいぐるみを介して僕たちに伝わってくる。
優しいことは決して悪いことなんかじゃない、全体的な事に悩むのは弱いことなんかじゃ決してない、寧ろ強いからこそだと思う。
目の前の問題に対して無理矢理適応して強くなった気でいることこそが真の弱さで、真の強さを持った者こそが今作で描かれる繊細で優しい者達なのでは。
そんな彼らがただただ傷ついてしまう、現代社会に蔓延るノンデリカシー・ノンリテラシー等の問題を浮き彫りにし、優しいだけではなく一種の問題提起をしていたかの様に感じられた。
度々、今作で顔を覗かせる""男らしさ""についての話だが、僕も仲間内でいかにも男らしさ溢れる女性について下品な話をするのが本当に無理なので、今作のキャラクターには特に共感出来たし、その事について「理解出来ない」と突っぱねられる主人公には凄く嬉しく思えたというか、希望を貰えた気がする。

優しいというのはいいが、あまりにも悩みを一身に背負いすぎて自身が押し潰される危うさがあり、真に優しい人達はそれに一切気付くことが出来ないのだ、それを回避するために彼らは行き場の無い悩みや胸の内をぬいぐるみに語りかける。
自分の悩みや想いが人を傷つけてしまうのでは無いか、そう考えてぬいぐるみにありったけを込めて話す。
しかし、彼らに対して本当に必要なのは同性質の人間達との対話だと思う。
でも性質上それは難しい、だからこそ皆んなで考えなければならないのだ、彼らの様な優しい人達が傷つけられない様にするにはどうしたら良いのか、自分の持つ有害性とどう向き合えば良いのか、その存在について投げかけてくる作品だった。