Punisher田中

マリッジ・ストーリーのPunisher田中のレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.2
ニューヨークで売れっ子の演出家・チャーリーと、そのチャーリーが所有する劇に所属する妻のニコールは離婚へ踏み出していた。
お互いに大きな仕事が決まっているため、弁護士を介さずに穏便に済ませようとしていたが...

かつての夫婦が敵対することになってしまう離婚裁判の形式そのものへの疑問を投げかける傑作。
試写会でたまたま知り合った映画好きの方のお勧めを機に鑑賞したが、昨年12月に結婚したこともあってか、かなり身近に感じる題材で強く胸を打たれた。
好きだけども、関係性を有耶無耶にしたくないから自分の中でケジメをつけるために第三者を交えて離婚協議を行うこと自体は良いのだが、協議に付随してお金だけがやたらとかかる制約が重くのしかかるシステムが残酷であり、それによって愛し合っていた人と血肉を貪り合わなければならないのはあまりにも哀れ。
そんな生産性の低い、悲しい形式上のやり方に対してメスを入れる今作、疑問点を投げかける作品としてはかなり秀でていた。
日本とアメリカとではまた違うかと思うが、日本でも子供が介在するのとしないのとでは、親権が関わることもあって凄くしんどい物だと思う。

今作はしんどいシーンが多い、特に所帯持ちの方なんかは。しかし、しんどいシーンの中だからこそ2人の性差を超越した愛が強く表現されている。
「大嫌い」だとか「死んでしまえ」だとか、裁判をしている最中に湧き上がった感情に飲み込まれることはあれど、お互いに愛を抱いているからこそ許し合えるし、飲み込める。
改めて分かったのは離婚をしても子供が介在するならば、結局はほぼ永続的にパートナーと繋がっているということ。
離婚についてを辛辣に描いているからこそ、反離婚作品であると同時に「離婚をするならしよう!」と勧めてくる、完全中立な作品だった、どちらにも取れる俯瞰的な内容で尚且つ、愛を可視化させるシナリオと表現力があるから複雑な立ち位置でいられる作品。互いの対照的な構図も素晴らしい。