Punisher田中

ゴッドランド/GODLANDのPunisher田中のレビュー・感想・評価

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
3.8
デンマークの統治下に置かれるアイスランドで教会を建てる命を受けた牧師・ルーカス。
火山と氷塊が混じり合う過酷の地で、ルーカスは教会建設を為すことができるのか...?

Fan's voice様にご招待いただきました最速試写会にて鑑賞しました。
この度はご招待していただき、誠にありがとうございます。

大自然が一面に映し出されるシーンの安心感というのは計り知れない。
人よりほんの少し映画を多く観ていても、その安心感は途轍もなくて揺るぎない。
しかし今作は全くの逆だ、どちらかというと人間に対して中立な観点で描いていると言っても良いかもしれない。
美しくもあれば、危機的状況下でも風は吹くし川の増水も止まらない、これは自然自体が神の様に思えてくる。
神も祈った所で決して危機を覆せはしなければ、神自体が手を下すことで差別や欺瞞がなくなることはない、祈るという行為が気休めでしかないと思う。
よって今作が、神と自然が人間に対していかに中立であるかを描いていることがわかる。
だからこそ壮大で牧歌的な風景が次第に恐ろしくなる。
自然と相対する前半パートでは自然の陰と陽を魅せ、後半パートではデンマーク人とアイスランド人との間にある溝、その溝の深さを魅せていた。
二国間の異文化衝突を見届けていると、自然を写す美しいシーンが段々と一行を見下ろす神の姿にも感じられる構図や、自然のシーンを差し込むタイミングは完璧。

当時のカメラ画角に合わせた比率の画面も世界観の骨子となっているからか、画面と合わさって気持ちいい。
全体の映像の質感も北欧の雰囲気を見事に表現しきっていてかなり良かったし、構図が何より良かった。
そして、それらを塗り潰していく人間の煩悩と醜悪さがより自然の存在を際立たせる。
自然vs人間、そんな一筋縄縄では行かない今作だが、今作で表現する人の醜悪さにある種の形容出来ない美を感じられた。