カタパルトスープレックス

美と殺戮のすべてのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
3.5
ローラ・ポイトラス監督によるドキュメンタリー作品です。芸術家ナン・ゴールディンの半生を縦軸に、オピオイド渦の責任追及の社会活動を横軸に描くことで、ナン・ゴールディンの生き様を浮き彫りにします。

アメリカのオピオイド渦は1990年代後半から2000代に起きた社会問題で、2018年にはボクもそのトピックについてブログ記事を書いていました。トヨタ自動車の役員が薬物所持で逮捕されたのが2015年。ナン・ゴールディンがP.A.I.N.を設立したのが2017年。すでに問題としては広く知られていたのにアート界は全く反応しない。それに業を煮やしてナン・ゴールディンが活動をはじめる。多くの抗議デモンストレーションはコロナ渦前ですね。

ナン・ゴールディンは社会的なテーマであってもとてもパーソナルな活動をしているのだと思います。急に社会正義に目覚めたわけではない。それは姉の自殺ともつながっている。

本作品をオピオイド渦の社会的ドキュメンタリーとして捉えるのは違うと思います。少なくとも、それはアメリカでは過ぎ去りつつあるトピック。本作品のフォーカスはナン・ゴールディンの生き様。そこに興味ああるかどうかで評価はだいぶ変わってくると思います。

ボクは80年代のニューヨークには強く惹かれるのですが、ナン・ゴールディンにはそこまで興味なかった。本作を観て色んな発見はあって知識としては興味深かったけど、強く自分と繋がりを感じるまでは至らなかった。かなりディープなニューヨークのアンダーグラウンドの話だったので、自分はそこまで深くニューヨークと繋がってないと言うことだと思う。