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ボーンズ アンド オールのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
3.6
1980年代を背景にした、人食いの若者のラブロマンス+ホラー+ロード・ムービー。

ティモシー・シャラメの顔面力よ。
グランジもダルダルな部屋着も血まみれも半裸も華がでるなあ。

突如父親に見捨てられた18歳のマレン(テイラー・ラッセル)己の食人衝動と向き合うことになり、僅かな手がかりから母親を探す旅に出る。途中で同類のリー(ティモシー・シャラメ)と出会い、助け合いを請い、旅の道連れになってもらい、やがて惹かれ合う……ラブストーリーとカニバリズム。

サリーというマレンに執着する同類の老人が出てきたり、食人と人食いしたい男のふたり連れに出会ったりと、母親探しの旅の間に差し込まれる緊張と、ふたりの間にある食人行為への解像度の差が恋情を通して描かれてゆく。

マレンが読んでる本、ちゃんと確認してないけどトルーキンっぽかったような……旅の仲間(指輪物語)かな。

タイトルの『骨と全て』食人する人達の間の共通の通過儀礼のひとつらしく、初体験の食人→骨ごと喰う食人行為と、その恍惚度に段階を踏むらしい。あとは愛の告白にもかかってた。

リーの「俺は父親を喰った。最高に興奮した。気持ち良かった(概略)」の台詞が、なんかもぉエロい、エディプス・コンプレックスに、カニバリズムを増量、しかも顔面強いティモシー・シャラメが言うから、インモラルな絵面が映える。

ラストシーンは、サリー襲撃時から時が過ぎた感じだけど、あの荒野の場面、リーの腕は動いていたなあ……。
「骨ごと全て食べてくれ」の結実した形のビジョンではあるんだろうけど。

ルカ監督らしい映像美とシャラメ愛が入ってる作品だった。
リーの妹ちゃん……良い子だったのにねぇ。
彼女を含めマレンやリーの肉親絡みはドラマが雑だし、主要2人の心理変化≒時の経過で有耶無耶にされた箇所があるけど、物語を逸らさずにいけたのはルカ監督の映像センスと俳優陣の力かもなあ。