こめ

ボーンズ アンド オールのこめのレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
3.0
最初らへんが好き。ワクワクした。でも中盤からは人を食べてしまう人同士の恋愛、という案外ただそれだけの恋愛映画だった。
 
人を食べるということが現実の何かのメタファーになっているのかなと勘繰りながら見ていたから、好きな人を好き故に食べしまうっていう倒錯が描かれるのかなと思っていた。しかし、結局はストーカーに襲われて恋人が死にそうだから仕方なく食べるという展開。なんか腑に落ちない。「好きだから食べたい。」「好きだから食べて欲しい」とかでもなく「死にそうだしせっかくだから食べてよ」ってなんか人喰いっていう設定のわりに妥協的すぎないかと思った。好きな人を食べてしまうってことを事故が原因で選択せざるを得なくなるっていうのは、人喰いっていう設定に全然向き合ってないなと思った。

同じ人喰い映画だったらジュリア・デュクルノーの「RAW 」の方が好きだった。ボーンズアンドオールの方は人を食べたいという欲求の度合いが結構ぼかされている。そんなに食べたそうじゃないし、食べなきゃ頭がおかしくなる感じもない。我を忘れて食べてしまうということもなく、かなりクールに食べてる。生理的な感じがしない。2人は接吻だけでセックスの描写はない。暴力的な題材が耽美のベールに薄皮一枚守られている感じ。

恋愛を外から鮮やかで軽やかなものとして見ている。そしてそれが立ち行かなくなったり、潰えたりすることを遠くから哀れみつつ美化しているように感じる。そういうのって辛い現実から自分をセラピーする手段としては分かるけど、2時間の映画でそれをやられると情けないフィクションだなと思ってしまう。
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