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サントメール ある被告のkossのレビュー・感想・評価

サントメール ある被告(2022年製作の映画)
3.4
裁判記録の発言を使って映画を創る試みだが、物語がない、演技がない、編集がない、感情移入できない。否ばかりの映画。被告の一瞬の笑顔や被告の母の一言、小説家の少女時代も劇映画効果を発揮しない。監督の領域であるドキュメンタリーとして制作したほうが良かったのでは。

主題は移民と母娘の関係。小説家の大学講演で流されるデュラス脚本の「二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)」の丸刈り女性(占領者ドイツと関係した女性の見せしめ)。小説家がPCで観るパゾリーニの「王女メディア」(主演は歌わないマリア・カラス)の子殺し。2つの引用はあまりに直接的で衒学趣味にしか思えない。

母親をキメラと呼ぶ弁護士の最終弁論はあまりに文学的でついていけず、真実を追う審理過程も緊張感はなく、法廷劇としても成立していない。

観るべきところは、フランスの裁判制度と法廷、法衣、被告が女性なのが理由か女性の多さぐらいである。
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