紅梅シュプレヒコール

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!の紅梅シュプレヒコールのレビュー・感想・評価

5.0
幾度も形を変えて映像化されてきた『ミュータント・タートルズ』の最新作

『スパイダーマン:スパイダーバース』から明らかにアメリカのアニメーションのレベルが一段階上がったことは間違いない

その後『ミッチェル家とマシンの反乱』『バッドガイズ』『アクロス・ザ・スパイダーバース』と傑作が続々と誕生していく中で公開された今作もまた見事な作品に仕上がっています

『ミュータント・タートルズ』に対して特別な愛着はなく、マイケル・ベイが製作した実写映画しか観たことがない程度の私でも最後まで楽しんで観る事ができました

物語は、化学薬品の影響でミュータントとなった4匹(人かな?)の亀が人間世界に受け入れてもらう為に世間を騒めかせている悪党"スーパーフライ"を追うというシンプルなもの

しかし、起伏の作り方や演出の効かせ方(音楽やカラーデザイン、絵コンテ)が上手く、徹頭徹尾隙なく見応えのある作品になっています

主人公のタートルズは勿論ながらもヴィランや一般市民まで魅力的に描かれており、最後の展開には胸が熱くさせられました(某スーパーヒーロー映画を想起させられましたが、恐らく意識的なものでしょう)

親子の関係やトラウマの克服などサブプロットの組み方も素晴らしい

そして、今作を語る上で外せないのはアニメーション表現の秀逸さです

荒々しいタッチが活かされた形で描かれたアニメーションから表出する迫力とティーンネイジャーのキャラクターが織りなす世界観にマッチしたストリート感が類稀な映像を作り上げています

グチャグチャな線でありながらも鑑賞者が認識できるラインを脱しないバランス力とセンスには感嘆とさせられます

個人的には『アクロス・ザ・スパイダーバース』を抜いて今年観たアニメーション映画の一位です