てるる

至高の奉仕のてるるのレビュー・感想・評価

至高の奉仕(2017年製作の映画)
3.6
IMW2022リターンズ①

カースト制度の更に下ダリト(不可触民)の住む荒れ果てた村。
水を汲むために掘った縦穴に落ちてしまった女の子を救うために奔走する人々を描く。

事件をきっかけに炙り出される政治の腐敗。
シチュエーションや話の展開としては「刺さった男」に近いけど、こちらはより社会派。

ナヤンターラ演じる主人公マディヴァダニは行政長官で、IMWのトリビア読むと身分や貧富関係なく試験で選ばれる官僚なんだとか。
中国でいう科挙みたいなもんか。

マディヴァダニは真摯に子供を助けようと動いているけど、政治不信からくる群衆たちの暴走、政治家の妨害、メディアの狂奔などに葛藤する。

両親も心配なのは分かるけど、あまりに冷静さを欠いていてイライラした。
なんなら救助作業の邪魔ばっかしてるし。

水不足が死活問題になっている村の近くでは最新型ロケットの打ち上げが行われている。
インドの国としての発展の影で打ち捨てられる民がいるという対比。

これは日本も他人事ではない。
もはや先進国と素直に言いきれないほど国力が落ちているのに、他国に何兆円という予算を割いておきながら日本国民のためには予算を割かない政治家たち。

マディヴァダニが「民主主義が揺るがされている」と危機感を語るように、日本も全く同じ状況。

憲法にも「すべて公務員(国会議員や大臣も含む)は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と定められているのに、官僚をこき使い、一部の上級国民や宗教団体のほうを向いて奉仕する輩が絶えない。

こういった問題提起をしてくれる映画ではあるけど、ドラマシリーズですか?てくらい中途半端に終わるのは残念。

ここからインド映画らしい政治家たちへの逆襲劇が始まるのか?!て思ってワクワクしてたのに…。
それこそ池井戸作品みたいな勧善懲悪な展開が欲しかった!
てるる

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