ぶみ

パリタクシーのぶみのレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
4.0
この週末は、誰もが知るような大作はないものの、小粒ながら面白そうな作品の公開が目白押しであったため、その中でも、早めに公開が終了してしまいそうなものを優先的にチョイス。
結果、松竹系のMOVIXにて三本はしごを敢行。
その一本目がこちら。

人生にとんでもないサプライズが乗り込んできた。

クリスチャン・カリオン監督、脚本、リーヌ・ルノー、ダニー・ブーン共演によるフランス製作のドラマ。
終活に向かう92歳のマダムと、彼女を乗せたタクシー運転手の姿を描く。
主人公となるマダムのマドレーヌをルノー、タクシー運転手シャルルをブーンが演じており、この二人を中心として物語は進行。
マドレーヌを乗せたシャルルが、寄り道したいという彼女の願いを聞いて、様々な場所に寄って行くロードムービーテイストで展開するが、都市から都市への大移動するのではなく、パリを横断する程度の距離であることから、山あり谷ありではないものの、エッフェル塔、ノートルダム大聖堂に凱旋門と、パリの主要スポットが軒並み登場するため、さながらプチ観光巡りをしているかのよう。
そして、何より本作品の肝は、マドレーヌが寄り道する度に回想シーンが挿入され、彼女の秘密が一つ一つ解き明かされていくとともに、無愛想なシャルルが変化していく姿であり、短い時間ながら、濃厚なドラマが詰まっている。
私的には、信号無視で警察に止められた際のやりとりが、心ほんわかさせるものであり、良かったシーンの一つ。
また、クルマ好きな私としては、シャルルがステアリングを握るタクシーが日本には未導入のルノー・エスパスであり、奏でるエンジン音が、私の愛車と同じ、乾いたディーゼルのそれであったということで、妙な親近感が湧いた次第。
タクシー運転手が主役となるフランス映画と言えば、真っ先にリュック・ベッソンが手がけた『TAXi』シリーズを思い出すところだが、同シリーズがアクション・コメディであるのに対し、本作品は正統派のドラマであり、ラストもこれまた王道ながら、悪いところは見当たらない出来栄えであるとともに、パリの美しい街並みに目を奪われる良作。

長い人生の10分なんて大したことない。
ぶみ

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