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福田村事件のhonobonのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.1
目の前で見たものを伝えること、聞いた話を伝承すること

ドキュメンタリーを取り続けた森達也がどこか若松孝二色の強い座組で100年前の史実から浮き彫りになってくる戒め映画。

群れという人間の文化とは、いいこともあれば悪いこともある。
誰かが困っていることがあればその問題を一人で抱えることをさせず皆で解決していこうとする相互扶助の姿勢。

例えば、なにか大きな出来事が起きた時、"絆"という言葉を使って一つにまとまろうとする時、それは群れの中にいれば共存関係が強くなっている時。そのなかに策略的な悪知恵が落とされたとしたら。
その悪知恵が誰も真実に直面せず、言葉で伝承され続けた誤ちの行く末だったとしたら。どのような結果が現れていくのだろう。

沼部新助のような誰とでも対等に、田向龍一や澤計七のように伝承された内容に懐疑的な視点を持つ。
それができたとしても澤田智一のように間違った力を行使してしまい取り返しのつかない結果を招いてしまうこともある。

声を聞けば東出昌大じゃん!と、見ただけでピエール瀧とわかる。話が進めば部落の薬売りが登場し、震災が起こるとデマが街中に流れそれを真に受けて朝鮮人は殺害されていく。
心の何処かではやり過ぎではないか、と感じてしまうものがある。それこそやり返されるんじゃないか云う恐怖心のような。

その、"誤ち"
過ちの先には何があるのか。どこへ向かうのか。
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