ボギーパパ

福田村事件のボギーパパのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.3
劇場2023-62 DENKIKAN

タイトルの福田村事件、恥ずかしながらこの事件そのものを全く知らなかった。反省。
しかし関東大震災から100年。
このタイミングでの公開は必要であり、必然であり、しなければならないと考える。
自分は観て良かったと思うし、内容には心の底からの悲しみと憤りを覚えた。

この事件の発端は、震災後に流布されたデマ・流言飛語。なぜ災害直後はこういったデマが流れるのだろうか?多くの研究がなされていると聞くが、人の心の弱さや醜さ、人の心に巣食う恐怖の発露なのであろう。

本件のデマは横浜発と聞く。私は横浜に生まれ、幼い頃祖母と過ごす時間が多かった。その祖母が時折震災の話を私に聞かせ、このデマの話があったことを微かに覚えていた。
その時は子供であったし、酷い話だなぁ程度であったが、今こうして本作を観た事により改めて酷さ、惨さ、悲しみが増幅したのも事実。

デマにより、身にかかる恐怖が増幅し、「外部」にその要因を求め、それを力で対象を排斥しようとする、、、ここでいう外部とは、デマの攻撃先である朝鮮人であり、この事件においては、たまたま居合わせた香川訛りの薬の行商人(被差別部落民)。つまりヨソ者に対しての異物排除の意識の顕在化がこれだ!

そしてこの心のベクトルが個々人同一方向に統べられて、一種の興奮状態を生み、さらに伝染し増幅され集団化し、一気に溢れ出す。このメカニズムの検証と警告が本作の肝であろう。
この肝の部分は余す所なく、細に入ってまで描かれている。

舞台となる福田村は江戸川、利根川の流域。
川の雰囲気も実際の野田の雰囲気がよく出ており、妙にリアル。渡しの風情も妙にリアル。

さすが森達也監督!リアルの中に物凄い訴えを埋め込んだ爆弾のような作品でした。



と、作品に対しての感想はここまで、、、

2023年9月6日=福田村事件の日
朝日新聞天声人語より

『関東大震災での朝鮮人虐殺について「政府として調査したかぎり、事実関係を把握できる記録が見当たらない」という松野博一官房長官の発言。』

なんじゃこりゃ!?
いつだったか都知事もこんなこと言ってたな、、、
国会では虐殺の事実には全く触れず記録に無いと言い張っているそうだ。

実に情けない。この作品をしっかり観て欲しい!
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