ボギーパパ

パスト ライブス/再会のボギーパパのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

劇場2024-31 TCサクラマチ

本年アカデミー賞・脚本賞、作品賞にノミネートされた🇺🇸🇰🇷合作映画。そしてなんとA24作品。

まずは結論から、、、
A24よ、こういう作品も作るのか!驚いた。
なんともムズムズ、心がザワつく作品。
好きなんだなぁ、こういうの!
この意外な取り組みにまずは興味津々。

そして本作は絶対映画館で集中して観なくてはならないモノであるということ!
そして観る人によって解釈が異なること間違いない作品。

冒頭
夜更けというか明け方のバー。アジア系の男女に、白人男性の3人組を、周囲の人が
「あの人たちどういう組み合わせなんだろ?」的に囁いているのを提示し、このシチュエーションへの興味を惹かせる。
アジア人同士は白人男性をほぼ無視、、、

ここから本作のテーマというか、構造というか、主人公達の12歳、24歳、そして36歳を描く3ステージを描く。

①12歳
いつも一緒に下校しているのであろう仲の良いナヨンとヘソン。突然のナヨンの家族は米国へ移住とのこと。思い出作りのデートもあったのだが、お互い好きなのに結局それを伝えずナヨンは渡米。最後のあの「別れ道」が印象的。

②24歳
ナヨンは英名ノラを名乗り、アメリカで戯曲作家への途を。ヘソンは韓国で兵役に。
ある日ノラは母から、父のFBにヘソンがノラに会いたい旨のメッセージが来ていたことを告げられる。ノラも早速ヘソンに連絡。 そしてFaceTimeでの再会、、、「わぁ」しか言葉が出てこない程の喜び、、、
大人になった二人はネットでの逢瀬を重ねるが、ノラは「米国在住韓国人」(ここがポイントかな)として、自らのキャリア確立のため集中したいとヘソンとの逢瀬を中断を提示する。

ここから描かれている部分に私は若干の?がついたものの、ノラはユダヤ人作家アーサーと出会い、結婚へと進む。大人だもの、理解し合えるパートナーを求めるのも必然か。

③36歳
更に齢を重ね、もうすっかりいい大人です(^^)
ヘソンの一大決心!渡米し実際24年ぶりの再会を果たす。ヘソンはもちろんノラの結婚を知っている。
それでも抑え切れない感情が
「君は僕の人生から消えてしまったけれど探せたよ」という台詞に、全てが込められているヘソンの想いに涙!自分にも忘れられない思い出があり、突然それを想起させるのは監督の狙いの一つか(^^)

一方でノラは、ヘソンの想いも知りながら、自分夢の実現とそれを支えてくれたアーサーへの想いももちろんあるわけで、、、
この辺のムズムズ感は観ている側を刺激し続ける!

そしてここで本作における重要な役割を果たすアーサーの存在が俄然際立ってくる。
ノラに対して、理解ある「ふり」したり、じわっと襲ってくる不安を拭えなかったりという雰囲気を実に素晴らしい間で演じている。

「13年ぶりに君に会いに韓国から来たんだもの」的なセリフから、理解している風を、、
「君の寝言はみんな韓国語だからね」的なセリフからそこはかもない不安を、しっかり感じることもできた。
そしてグリーンカード!もしかしてノラはこれ目的で?なんて不安に思ってたりしてるのかとも想像させるゾクゾク感もあった
アーサーを演じるジョン・マガロさん、貴方には本作のMVPを差し上げます。

①〜③を通じて
ヘソンの想いの強さは感じるが、実際行動を起こしていない点に、ムズムズし、
ノラに対しては、米国在住韓国人としての自分確立を優先しているようでもあり、アーサーにもヘソンにも揺らぐ想い?かもにムズムズし、
アーサーには、信じたいけどビミョーに不安に苛まれている姿にムズムズする。

まぁ全編通じて、自分が忘れかけている男女の純粋な「想い」を比較的平坦な描き方なれど見せ続け、なおかつ作り手の思い通りに刺激され続ける、やられた感満載の作品です。

舞台装置として本作はNYでなければダメだろう。
カルーセルが印象的な川沿いの遊園地。
自由の女神観光フェリー。
これらのテイストが作品にしっかり反映されている。
仮に日本版リメイク(なんとなくありがちな、いや、あったねとも思う)を
作ったとしても全然ムズムズしないだろうとも確信する。


⬇️以下ホントにネタバレ含みます。





最後に、、、
なんといっても今作品の白眉はラストシーン!
バーでの会話。ノラを挟んでヘソンとアーサーが座る。ノラとヘソンの会話は韓国語。ノラはたまに、そうたまにアーサーに通訳する。その割合が徐々に低下して、、、ほぼノラとヘソンの会話となっていく様が切ない。
(実はアーサーは韓国語マスターして全部わかっていた、なんでオチだったらどうしよう、、、などと妄想(^^))

帰宅後、
「ウーバーまで送って来る。すぐ戻るから」
ノラのセリフに
「うんわかった」と応じるアーサー、、、

路上に出たヘソンとノラが画面左に動き出す。カメラは歩みに合わせてパン!
歩みながら二人は二人のイニョン=因縁について語る。この話が深い!

「ウーバーは?」「2分で来るって、、、」
この2分に36年分のほぼ24年の重さが、ずっしりと乗って来る。実に重い2分。

見つめあう二人、、、、さぁどうなる?
行くか?行かぬか?、、、結果は、、、、



さらに⬇️



ヘソンと再び「別れ道」で別れて、画面右に戻る。カメラは右にパン、、、
するとそこには、、、居るんだなぁ、アパートメントの前の階段にアーサーが座っているんだなぁ、、、
ここは予想はつくが、わかっていてもジンって来た!
この感覚はぜひ誰かと共有し、語り合いたいです(^^)

A24、やるじゃないか!
こっちの路線も今後期待が増したよ。



左(過去)→右(未来)
ヘソン→アーサー
カルーセルの回転
象徴的な分かれ道
ヘソンは左に、ノラは右に
ラストシーン
送る時は左に、戻る時は右に

NY入りのノラ→
兵役のヘソン←す
ボギーパパ

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