ボギーパパ

オッペンハイマーのボギーパパのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8
劇場2024-28 熊P

本年のアカデミー監督、主演・助演男優、撮影、編集、作曲そして作品賞の7部門総ナメ作品。そして公開されるか?それとも?と気を揉んだ作品。
公開初日初回に鑑賞。

なるほどなぁ、、、
こりゃアカデミー賞7部門、、、

ノーラン監督の「何を見せるかと同じくらい、何を見せないかが重要だった」この言葉に集約されている通り、原爆被害を見せずに、語ったことのなんと多く、苦しさに富むことか、、、

撮影賞はわかる!やはりトリニティのパートは凄いの一言。 

作曲賞はどの部分が本賞にあたったのか分からなかったが、音響施設の良いところでの鑑賞をお勧めします。凄いから!

そして編集賞、、、ノーラン節炸裂というか、細かな描写を用い、時間を行きつ戻りつ一つの物語を紡ぎ出している。『TENET』『ダンケルク』同様で、判りづらく、このところのノーラン作品は正直苦手だったのだが、今作は観終えた時にはオッペンハイマーという人物を通じて、核という大問題と人間の関わりが身に染みる、、、、ように仕立てられてはいた。判りづらいけど、、、
モノケロとカラーを使い分けたためもあるが、不思議なマジックを掛けられたようになっている。

大まかに分けて本作は二つのパートから成っている。①原爆開発=マンハッタン計画のお仕事映画部門と、②裁判ではない公聴会?査問会?の法廷映画部門の2つだ。

①は研究者・学者の性を突き詰め、その追究したいという欲望と、それによる悔恨の2面を、量子の象徴した火の粉、水滴、埃をふんだんに挟み込みながら描く。
そして②はその悔恨の元となった大量殺戮兵器開発自体の、かつての仲間達の裏切や罠を含めた倫理と出世欲が絡まり合う法廷劇となる。

いずれにしても緻密な計画により、緻密な描写、緻密な演技を、積み上げに積み上げて作られている印象。
オッペンハイマーの内面を描く作品としてアップの多用、それによるメイクの変化、目の細かい動きなど計算ずくで作られた感じかなぁ

計算ずくでありながらもその計算に応える、さすが主演及び助演男優賞のキリアン・マーフィ&ロバート・ダウニー・jr。
いやぁ凄い凄い!息を呑む演技というのはこういう演技のことを言うのか、、、
言葉が出て来ない。

他の俳優陣もすごいんだけど、、、あまりに登場人物が多過ぎる。しかも物理学者として世界最高の人達らしいのだけど、自分に知識が無さすぎてボーア、アインシュタイン、テラーくらいしか知らない。
一度じゃ無理だね、理解するには、、、、
でももう一度観るかというと、正直3時間はキツい。

とこのような凄い作品を作り上げたわけだから監督賞、作品賞も納得はする。判りづらいけど、、、
時系列も複雑な構造で、ユダヤ、ドイツ、ソ連、日本、そしてアメリカの複雑な状況を、多くの出演者のすごい演技で、核戦争の悲惨さを言わないようにして、伝えている作品。

本作のオッペンハイマー氏のアップ画面の多用には、オッペンハイマーという人の中に全てをぶち込んで、彼の毛穴からじわっと絞り出したような作品として、たいへん象徴的でありました。
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