jonajona

福田村事件のjonajonaのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.5
すごいよかった。
ドキュメンタリー監督森達也氏が関東大震災後に起きた実際の事件に着想を受け映画化。ドキュメンタリーに拘ってきた監督がフィクションの形で伝えたいことがなんなのか気になり鑑賞。

本作を見て日本映画には自国の病理を内省した批判的な映画があまりに少ないことに気付く。

逆に言えばそんなものが無いのはとっくに当たり前のこととして諦めていた節があった、ということについても気付かされる。


映画を見終えて彼女と家に帰る道中、喫煙所で若い外国人のお兄さんが酔っ払いの中年男性2人に絡まれて談笑しているのを見かけた。
カタコトの日本語で苦労しながら必死に話そうとしてる彼の返事を待たずに(聞いてるのかも定かでない酩酊具合で)中年の日本男性は彼にたいしてこう問い続けてた。

『日本人になるのかっ⁉︎』
『日本人ッ!日本に帰化するの?
日本人になるのッ⁉︎』

お兄さんは戸惑いながら、なる、がんばります、という様なことを言ってたと思う。
すると男は
『えらいねっ!』
と言った。

日本人になって何が偉いんだろう?
こんな国の人間であることのどこが?

彼らの関係が職場の先輩後輩なのか、あるいは酒場で偶然知り合って喫煙所に立ち寄った程度の仲なのかは知らない。
どんな立場の人間でも敬意をもって話すべきだと思う。海外から金を稼ぐために言葉のわからない国に来て勉強しながら働いてる人の方が100倍偉いと思うんだが、日本人になろうとする行為の何がえらいんだろうか。その国の人の自国に対する思いとかを度外視してそんなバカげた言葉を投げかけられる神経がどうかしてるんじゃないかと思うと同時に、この『福田村事件』の頃から日本人の中にある臆病さと表裏一体の賎民意識は変わってないんじゃないかと思った。
自衛精神の暴発は今でも起こりうる。すでに起こってるかもしれない。
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