つかれぐま

福田村事件のつかれぐまのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
3.0
23/9/13@アップリンク❸

水道橋博士と松浦裕也が演じた二人の村人が哀れでならなかった。ルックス、肉体、知性の全てに劣る二人が、村内でのプライドを守るための「唯一の勝ち筋」があのような愚行に至るとは。

一人は軍隊で挫折し、もう一人はおそらく身長不足で失格(それでも軍服を着ているのが切ない)。その二人に加え、口火を切った意外な人物も、加害者の多くは「弱者」たちだ。条件がそろってしまえば、弱者が集団ヒステリーを起こし、こんな恐ろしいことをする。そして何もできないインテリの村長と教師。「独りじゃ何もできないくせに」と突き放し、日本人の本当に嫌な特性を抉り出し抽出して見せる語り口が凄い。

残念だったのは、
極左的水平社宣言の挿入と、セックス原理主義で村の女性3人を括ってみせた性描写。昭和・日本映画の搾りかす感が否めず。古いし、なにより作品のテーマと結びついてこない。川と渡し舟の情景が美しく、象徴的に機能していただけにそこは惜しかったな。