織田

福田村事件の織田のネタバレレビュー・内容・結末

福田村事件(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

関東大震災が起こった時に「井戸に毒を入れた」などの流言があり、その結果何が起こったのかは、私も昔社会の授業で習いました。
ただ、この事件について知ったのは映画が初めて。史実をもとにしたフィクションである、ということを念頭に置いて鑑賞するべき作品だとは思うものの、知られざる『福田村事件』を理解しやすい形で映画化したことがまず凄い。で、この福田村事件は100年前の事件とはいえ、現代でも問題は地続きだと思わされました。

昨今、正義を名乗る人たちが極端な立ち位置で物事を断罪したり、人々の怒りを煽っているケースが多い気がします。もちろん世直し的な道義を持ってやっている人たちが多いんでしょうが、作品内の「自警団」と変わらないような未来も予想できて結構怖い。もう一つ恐ろしいのは、「叩いていい」とひとたび認識したら徹底的に叩いたり、否定する風潮が強くなっていること。映画の中で描かれるムラ社会的な要素とは違うかもしれないけど、集団心理の危うさは特に印象に残りました。コロナの時もそうでしたよね。マスク警察とか。

ちなみに『福田村事件』では男女関係を持つ描写があって、それがノイズとなった方も少なくないと想像します。個人的にも、随分執着した映し方をするなと思って観ていました。
ただ、あの文化は当時村の中に確かにあって、住民の火種となりうるものだったはず。関東大震災の15年後に起きた事件をモチーフにした『丑三つの村』では、性愛の部分がより直接的に物語に影響しました。なので田中倉蔵、島村咲江、井草マスといった人たちのエピソードは、この映画に必要だったというのが個人的な認識。

なお不自然に浮いていたように映ったのが新聞記者のくだり。当時における新聞の果たす意味を考慮したとしても、「記者」に対する作り手側の執念や願望を感じてしまいました。「新聞ではこういう報道がされている」という客観的事実だけで良かったのでは?

セリフの把握ができないところが少なからずあり、予定が合えば字幕付きで再鑑賞したいなと思いました。
織田

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