織田

隣人X 疑惑の彼女の織田のネタバレレビュー・内容・結末

隣人X 疑惑の彼女(2023年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

センテンススプリングなる迷言も流出したベッキーと川谷のスキャンダルで「文春砲」が脚光を浴びたのは8年前。近年は週刊誌のスクープが当たり前のように世間一般の共通話題へと発展するようになり、特に週刊文春の権威性は多くの人が知るところとなった。
こういうゴシップ報道を必要としている人と毛嫌いする人がいる中、私は圧倒的後者で、誰かを晒し上げて徹底的に叩く一部週刊誌を嫌悪している。先日は某誌が伊東純也の選手生命を奪いかねない暴挙をしでかしたことで、某社の書籍はしばらく古本以外では買わないと決めた。

そんなアンチの自分ですら、おかしいと思ったのが今回の映画『隣人X』の描写だった。講談社がロケーション協力や製作委員会に入っているので「週刊東都」の編集部の雰囲気は実際あんなものなのかもしれないが、それにしてもマスコミ連中の実態を舐めすぎでは…?柏木実家に報道陣が押しかける(ゴミのような詰問付き)のとかさすがに有り得ない。週刊東都の一報が出ただけに過ぎず、他社は裏が取れていないし、仮に当人がXだったとしても犯罪者でも何でもないわけで、メディアスクラムをかけるにはあまりにもリスキー。しかも終いには誤報を飛ばした記者が謝罪会見をする。これは謝罪をしない現実のマスコミへの皮肉なんですかね?

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ご都合主義はマスコミ描写に限らず作品全体に感じた。

笹記者は取材対象に不審さを漂わせながら近づき、スクラッチの謎ルールで食事の約束を取り付け、俺は新聞記者になりたかったけど高卒だったから雑誌編集者にバイトで入って社会派担当の記者を目指している、と語る。そうですか、頑張ってください。としか言えない、私なら。そもそも記者だと名乗る男に突然粘着され、取材を受けたわけでもないのに食事に誘われて断らない柏木さんもだいぶ凄い。一緒にご飯を食べるに値するメリットを笹憲一郎に感じたということなんでしょう。ちなみに柏木がブックカフェをあっさり始めてるけどカフェの開業資金がどれだけかかるのか考えると謎。

台湾から来た蓮の描写にも、異質さと断絶を強調するかのような意図が垣間見える。偏見や色眼鏡がテーマとされていたようだが、それを気にしすぎている作り手側がフィルターかけてるんじゃないですかって話。コンビニで蓮のレジに並んだお客さんがしまったという風な表情をする──という柏木の話は実感があったものの、現在は都内だとおそらく外国人のコンビニ店員の方が多数だったりして、詰まるところ当人の慣れ的な話だと思う。

Xの脅威にせよ、日本で暮らす外国人の孤立にせよ、正直どうでもいいことを騒ぎ立てるお話。しかもあらすじで触れていたXの目的については何も明かされない。
「あっそ」って感じの映画でした。
織田

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