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福田村事件のJPのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.6
想像を遥かに超える濃厚な群像劇。どんどんすごい俳優が出てきて、それだけでも見応え抜群。
彼らの物語に共通して描かれるのは、罪悪感。登場するほぼ全ての人物に後ろめたさがあり、そのしっぺ返しを喰らうことを恐れ、排除をしようとする者も現れてしまう。その愚かさが描かれる。

全編にわたり「白」が印象的。特に静子というキャラクターは白で埋め尽くされていて、傘に衣服に肌の色にと、とにかく全てが白色。そして朝鮮で作られた白磁の指輪と、それが入っていた豆腐。極めつけは朝鮮飴。
朝鮮飴に血飛沫がつく場面の恐ろしさ。白い飴に赤色の点がつき、日の丸を想起させてしまうのも恐ろしい。有害性に満ちた日の丸。

東出昌大、今作でもふしだらな役ばかりやらされてないか…??と心配になったりもしたが、やっぱり今回もハマり役!たとえ集団の後方にいても背が高いから頭ひとつ飛び出て目立っちゃう感じとか含め、色気と魅力が常に漂う倉蔵。閉塞感に満ちた村だからこそ、船で向こう岸へ連れて行ってくれる倉蔵のことを、静子も咲江もつい好きになっちゃうのも納得。

薬売りと新聞社が、一番遠い関係性にあるはずなのに呼応しているのが面白い。
(実際、新聞社と薬売りのシークエンスが直に繋がっていたり)
共通点としては、どちらも情報を操作して商いをしている点。
薬売りは在庫を実際よりも少なく伝えたり、効能を偽ったり。
新聞社は報道する内容の取捨選択をしている時点で当然情報を操作せざるを得ない。
「朝鮮人やったら殺してもええんか」のド正論が永山瑛太演じる薬売りの口から出た時は鳥肌が立った。

ラストの殺戮、刺される時のSEが派手でないのも良かった。ラストの殺戮に向かっていく群像劇ではあるものの、決して安易な見せ場にするのではなく、恐ろしく悲しき事実として淡々と描かれていて◎
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