すぎやままゆこ

福田村事件のすぎやままゆこのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
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朝鮮で虐殺にかかわる通訳をしていた者、その妻、朝鮮人に旦那を殺されたように吹き込まれた妻、社会主義者(拘束ののちに殺害)、新聞記者の対立、行商、ハンセン病、被差別部落民(水平社宣言も)、女性、自警団、軍人などなど様々な群れを描き、対立や差別や心情を描いており、且つ役者陣が見事で心情描写が少なかった人役でも見事な演技でわかりやすく伝わった。
水道橋博士は塩梅もすごかったと思う。

ただ一方で、音楽や脚本がわかりやすすぎる=意図的とも言えてそこがむずむずしながら観てた。
やはりドキュメンタリー監督の限界かと思わされる終盤の肝心な殺戮シーンは変なふざけた太鼓が鳴り響いてワー!みたいな適当な演技、加害側ももっと危機迫っているべきだと思う。
あの時代にあの高身長イケメンばかりというのも大変違和感、史実と違う部分があるのは知るのも難しくわかりかねるものの、せっかく衣装とか舞台しっかりしているのだからノイズになるような当時とのズレは勘弁!

この手の映画は良し悪しのレビューが乱立すべきところを皆似た感想を持ってるけどもっと色んな意見がでて議論のきっかけとして捉えるべきと思った。

朝鮮差別が過熱してた当時の混乱の日本において、日本人が朝鮮人9人を殺したとして事件にならない。日本人が日本人を朝鮮人と誤って殺したから虐殺事件となった福田村事件。
この事件のそとでは、日本人が大義()の元たくさんの朝鮮人を殺していたり、朝鮮人と勘違いして中国人や障がい者を殺しているのよね。語られることさえない、慰安碑もない、6000人以上とされる暗数の犠牲者がたくさんいる。
そして驚くのは野田で育った方や祖父が事件に関わってた方もまったく福田村事件を知らなかったということ(部落に関連する話題は今もタブー視されているそう)、福田村事件のご遺族が私ももしあの場にいたら加担してたかもと言う、デマと差別が最大の人権侵害だと。
この事件を知らなかった自分も然り、身内が事件にかかわっていてもそうなのだから、それが森監督で素晴らしいクオリティで映画化したこと、ゆえにそれがたくさんの人に届いたこと、そしてこれだけ考えるきっかけになること、それはかえがたい価値があると実感。
大概の人が心から命を奪われるような恐怖に襲われたことがないから信じられないような出来事だけど、もしやらなければやられると強く思ったら?
まさにどこにいくのか教えて?と人に問うてしまうし、問われたら逆に教えてよと言ってしまうんじゃない?