あまのうずめ

ペトラ・フォン・カントの苦い涙のあまのうずめのレビュー・感想・評価

4.0
ペトラ・フォン・カントは使用人マレーネのブラインドを開ける音に起こされ母に電話をかける。母は半年間マイアミに出掛けるとのことで、ペトラはお金を工面すると告げる。友人シドニーが訪ねて来て、ペトラが夫と別れたことを心配する言葉をかける。シドニーとオーストラリアからの客席で知り合ったカーリンがペトラ宅にやって来る。


▶︎ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才と言われるライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の作品を初めて観た。短命ながらも多数の作品を残していて名前だけは知っていたが、聞いていた通り“クセ”の強い内容だった。監督自身の舞台作を映像化したもの。

冒頭に『ある症例』『本作でマレーネとなった者に捧ぐ』とクレジットされていて、観終わってこの言葉をこれほどまでに噛み締めることとなるとは思わなかった。

成功したファッション・デザイナーのペトラがマレーネやカーリンらを支配、所有しようとした結果をシニカルに描いていて、移動させた焦点、対象を捉えた構図も相まり、ペトラの言動にこれでもかという位嫌悪感を抱かせる。それで正解と言わんばかりに、観る者を突き放したヒリヒリ感はクセになりそうな感覚を覚えた。

使用楽曲がプラターズの『煙が目に沁みる』『グレート・プリテンダー』とオペラ『トラビアータ』、壁面いっぱいのバロック絵画、奇抜な衣装とバラバラなテイストも印象的で、他のファスビンダー監督作品も観たいと思わせられた。