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の方へ、流れるの教授のレビュー・感想・評価

の方へ、流れる(2021年製作の映画)
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スキャンダル、ゴシップに関して他人の色恋事情を煽り立てるマスコミは「商売」として割り切るとして、その「イメージ」で仕事を制限されるぐらいに倫理観に「立腹」している「大衆」というのは嫌いだ。
ということで、本作に主演している唐田えりか自体は素晴らしい女優でもあるし、今後も活躍してもらいたいなぁと思う。

しかし…竹馬監督の前作「ふたつのシルエット」は大傑作だったにも関わらず、本作はなんだか乗り切れない。
まさに本作が、かの「スキャンダル」のような「匂わせ」に終始した映画で座りが悪い。

その日初めて出会った他人同士という「関係性」によって生まれる他者への好奇心。
素性もわからない人間への直感的な興味によって、他者だからこそ想いをぶちまけたり、相手から独白を引き出したり。
自分をミステリアスに演出したり、相手に毒づくことで感情を引き出したり。

その好奇心からくる性急な期待と打算が、結果的には駆け引きに過ぎず、期待を消費するだけの代償として、自分の人生を退屈にもし、また他者の見たくもない嫌な本質を見る羽目にもなる。
という物語。

その辺りが「会話劇」という様式を採用したことによってとても退屈なものになってしまっている。
無機質なやりとりは、主人公ふたりの時折溢れる感情に対しての抑揚として機能はしていても、シチュエーションがどうしても説明不足、情報不足のために作中の世界観にリアリティを生み出せない。
それ故に「シュールさ」が際立った先に訪れる「オチ」の部分の卑近さがより生臭さを持ってしまう。

その辺りを「良い」とすることもできるのかもしれないが…僕にはむしろ退屈な毎日繰り返されるつまらない日常の光景で、わざわざお金を出して観るべき世界ではなかった。
そもそも会話劇として…今泉力哉や濱口竜介という作家が日本映画にはいるわけで、その部分で描かれているテーマや描き方においては残念だが、古臭さも感じるし、人間への視点としてもう少し映画的な飛躍が欲しい。
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