rage30

正欲のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

水フェチの男女の話。

タイトルからして、コンプラやポリコレについての話なのかと思っていたのですが、特殊な性癖を持つ人々の生き辛さを描いた作品でしたね。

水に性的興奮を覚えたり、それ故に人間を性的対象として見れなかったりと、マイノリティーの中でも更にマイノリティーの人達を描いているのが興味深かったです。
「地球に留学しているみたい」という台詞がある様に、浮世離れした彼らの感覚はまるで宇宙人を見ている様でもありました。

彼らを全面的に理解するのは難しいものの、一方で共感出来る部分もあって。
特に新垣結衣が演じる桐生夏月が受ける抑圧は、特殊性癖がなくとも、独身の人なら共感する部分が多いのではないでしょうか。
結婚や出産のプレッシャーとハラスメント…それが意識的であれ、無意識的であれ、それに苦しんでる人間にとっては、子供を見るだけでも辛かったりするわけで…。
本当に何が地雷になるのかなんて分からないんだから、世間話は天気の話をしてれば良いんですよ。

あとは、稲垣吾郎が演じる寺井啓喜も面白かったかな。
風船の件も笑ったのだけど、子供のYouTubeを見せられた時の興味のなさにも笑っちゃいました。
動画の内容よりも、どうやって撮影したのか?とか、どうでも良い事ばかりに注目してしまうのが、あるあるな感じがして、本当に子供に関心がない事が伝わってきましたね。

物語的には、水フェチ同士の男女が偽装結婚をする事になるわけですが、結局は夫婦や家族といった枠組みに収まってしまうのは残念なところ。
むしろ、そうした枠組みからは外れつつ、それでも社会の中で幸福を追求する姿を見たかったのですが、逆に「夫婦や家族にならないと幸せにはなれない!」と言われてる様で、むしろ社会の閉塞感をより強く感じてしまいました。

まぁ、それが現代の逆説的な批評とも読めなくはないし、未来への希望は子供YouTuberに託されているのかもしれません。
何にせよ、水フェチの人も独身の人も、不登校の人も男性恐怖症の人も、全ての人が生き易い世界になる事を願うばかりです。
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