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戦場記者のfujisanのレビュー・感想・評価

戦場記者(2022年製作の映画)
3.7
『秩序もクソもないですよ』

国際ジャーナリスト界のアカデミー賞、ボーン・上田記念国際記者賞を受賞するなど、日本が世界に誇る戦場記者の須賀川拓。

つい先日もTVでイスラエルでの活動が報告されていましたが、本作は彼の2021年~2022年の戦場での活動を記録したドキュメンタリー映画。

TBSのTV番組 『クレイジージャーニー』にも度々登場する彼は、笑うと線になってしまう人懐っこい笑顔で意外に饒舌。でも、淡々と語る内容は壮烈で、息を呑む内容ばかり。

そして、無精髭に丸太のような二の腕の太さを見れば、いかに現地が精神的にも、そして肉体的にもタフな状況なのかがよく分かります。

『なぜそんな危険なところに行くんですか?』 と問われ、
『銃を持った武装勢力が居るところには抑圧された人がいる。抑圧された人の声は、現地に行かないと拾えない』
と淡々と答える仕事人。そんな彼の優しさが垣間見えるドキュメンタリーでもありました。

ドキュメンタリー映画『戦場記者』公式サイト
https://senjokisha.jp/



本作に登場するのは、2021年のガザ地区、そしてウクライナのチョルノービリ(チェルノブイリ)、アフガニスタン。

どれも凄まじい映像でしたが、特に印象に残ったのは、やはりパレスチナ自治区のガザです。

本編に登場するのは今の紛争が始まる前の2021年。パレスチナ自治区の側で取材し、今イスラエル軍が無差別に爆撃・破壊しているトンネルの取材を行っています。

また、当時世界で最も人口密度が高かったガザ地区で一生懸命に生きている人たちの声。今これを見ると、市民の方々どうかご無事でと思わずにはいられません。



『秩序もクソもないですよ』
あまりの戦場の苛烈さに、吐き捨てるように語る須賀川。

つかの間の休息で
『これはもう、当事者同士は多分解決できない。
でも考えることをやめちゃったら、それでおしまいだから』
と語り、彼はまたヘルメットを被って戦場へと戻っていくのでした。


TBSに所属しながらも、すぐに現地に飛べるようにと責任職につかず(中東市局長ですが職員は彼一人)、未だに平社員と自嘲気味に笑う彼ですが、彼のような人がいるからこそ現地の声が届く。

そんな世界に誇る戦場記者が日本にも居るんだということは、覚えておきたいところです。

今もどこかの戦地にいらっしゃるかもしれませんが、どうかご無事で。




2023年 Mark!した映画:361本
うち、4以上を付けたのは41本 → プロフィールに書きました
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