ジャクト

西部戦線異状なしのジャクトのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
4.5
第一次世界大戦が舞台。若きドイツ人兵士のパウルが、絶望と苦悩に満ちた戦場で生き長らえるために奮闘する様が描かれている。

まず、映像が素晴らしい。銃撃や大勢の歩兵の突撃など戦争映画らしい迫力があるのは勿論のこと、アングルの妙か編集の巧みさか、戦闘中の緊迫した空気が画面から存分に伝わり、観ているこちらも息を飲むような場面が多々あった。

また、兵士の歯の黄ばみや泥にまみれた姿など、随所にリアリティーが感じられ、本当の戦争、本物の兵士を撮影しているかのような臨場感に溢れている作品だと思った。

原作は未読だが、休戦協定を結ぶ様子や上官の優雅な生活などは、映画独自の要素として追加されている部分らしい。その箇所が反戦映画としてのメッセージ性を高め、戦争というものに翻弄されるパウル達への感情移入をしやすくしている要因だと感じられた。

上官が豪勢な料理を食している清潔な部屋と、画面の向こうから悪臭さえ漂ってきそうな戦場との落差。人を殺すことの感触と後悔。わずか数百メートルの陣地を守るために多くの命が犠牲になった、その残酷さ。

ラストに大写しになる「西部戦線異状なし」のタイトルに皮肉がこめられていることに気付いた時には、思わずため息が出た。素晴らしい作品でした。
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