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国道20号線 デジタルリマスター版の一のレビュー・感想・評価

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おそらく二十歳前後の頃に一度観て以来。前回得た印象よりもずっとスゴかった。ここに映っているのは資本によって造られた郊外ロードサイドの憂鬱な楽園である(パチンコ、消費者金融のATM、ドンキホーテ、ラブホテル、すき家、etc...)。どうしようもない、終わっている人間ばかりが登場する。だからといって、この映画は彼らを対象化もしない。観ている僕はいつのまにか彼らに同化していく。憂鬱と幻滅に覆われた虚ろな願望(結婚、タイ、幻覚)にすがっていく。安室“Can You Celebrate?”をあんなに真剣に聴いたことないよ。車の列を見て「こいつら、どこ行くっつーだ」と文句をこぼしながら国道を横切っていたヒサシが、行くあてもなくただひたすらバイクを走らせるラストには、ブレーキの壊れたバイクでどこまでも走り続ける山田辰夫(『狂い咲きサンダーロード』)を思い出してしまった。にしても、柴田勲のトランプセーター事件(坂東でもないし東尾でもない!)を2022年の今笑い話として聞かされるとは。全編セリフもスゴいす。
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