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フェイブルマンズのようのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
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あまりに要素の多い映画だけど、1番心に残ったのは【映像のもつチカラ】だった。

先日NHKで放映されたドキュメンタリー「シン・仮面ライダー」は、庵野秀明の傲慢さや現場のギスギスした空気の悪さを大々的に伝え、ほぼ炎上レベルまで庵野秀明のイメージを下げた。一方で、それを受けてなのか公式側から「現場調査報告」というポップなカタチで、メイキング的なドキュメンタリーが公開された。こちらは終始笑顔に溢れ、冗談を飛ばし合う庵野秀明や出演者が写されていた。これは、どういう事なんだ?庵野秀明はとんでもないパワハラ野郎で俳優たちは顔も合わせたくないんじゃなかったのか??と、ネット上では混乱が起きていた。

ここで重要なのは、あくまで「ドキュメンタリーはディレクターの感想文」であるという事。本当に事実のみを映し出してはいない。映像には編集者(監督)の意図がある。たまたまNHKの担当者が“ここを切り取れば視聴者は楽しむだろう”のポイントが『パワハラとギスギス感』だっただけ。一方、公式側のメイキングの面白ポイントが“和気藹々な庵野秀明と俳優”だっただけ。こうやって同じ事象をカメラに収めても、編集側の「感想文」は視聴者に異なる印象を与えていく。

そんな映像作品の暴力性を、天才スピルバーグは複雑な両親の人間関係の中で気づいてしまう。なんて事のないファミリーフィルムでさえも、スピルバーグが編集をする事で、意味を際立たせる。詳細は見せていなかったが、多分不倫のシーンを、ズームしたり、繰り返したり、父親のシーンの直後にインサートしたりと、あらゆる“編集”で、母親にその罪を見せつけんだろう。あの押し入れのシーンはスピルバーグの怖さが十二分に伝わってきた。ほんわかした流れにいきなりホラーをぶち込んでくるセンスがヤバい。ああ、そうだこのジジイは人を怖がらせるのが大好きだったと思い出させてくれる。

冒頭で要素が多かったと書いたけど、上映時間も長いので、最後の方は飽きてしまっていた。ただスピルバーグが天才なことはよく伝わってきた。年齢が倍のジジイがこんなものを作っているというその事実。ラストシーンの笑えるカメラワーク。最高でした
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