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山女のようのレビュー・感想・評価

山女(2022年製作の映画)
3.8
2023年劇場鑑賞 77本目

『山女』凄い映画だった。江戸時代の東北のある村のムラ社会、差別、人権やジェンダー意識の低さ、階級制度を淡々と描く。どこを切っても現代日本に繋がっていて、日本は今まで文明国だった事は無いのかと痛感。企画、撮影、録音と多くの外国人が参加していたので外から見た日本をガッツリ抉られた感じ

色んな最悪盛り合わせだけど特に際立っていたのが永瀬正敏さん演じる父親が家父長制地獄だった。家のために娘に罪をなすりつけたり、〇〇として差し出したり。村の村長(権力)サイドも地獄で『もう決まった事だから』と事を進める様はオリンピックやマイナンバーゴリ押し政権に重なって見える

父親がそこまでしないとあの村には住めないという閉塞感が絶望的。娘は、逆にそれを利用して地獄である村を出て山に行くという口実に使ったのかもしれない。そんな娘役の山田杏奈さんが素晴らしかった。いつもメディアで見るキラキラしている女性があんな泥まみれになって演じているの日本の宝だ

森山未來さんは佇まいと視線だけで全てを語れているのが凄い。台詞は無いのにあの山男の辛く悲しい背景が読み取れた。それだけにもう少し山の中の2人の生活(解放)を描いて欲しかった。血縁、ムラ社会から切り離された娘の笑顔は、地元から離れて都内で暮らす自分としては凄く良くわかる感覚

地方に根付く“お前どこ中?”から入るオールドボーイズネットワークに馴染めなかった者は、山(東京)に逃げ込むしかない。勝手にそんな風に主人公と自分を重ねて観ていたのかもしれない。画面も暗いし、台詞も方言がキツくて全然聴き取れなかったけど、最後まで飽きずに楽しめたのはそこかも
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