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トワイライト〜初恋〜のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

トワイライト〜初恋〜(2008年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

両親の離婚によって引っ越してきたベラ・スワンは、転校先の高校になじめずにいた。そんな彼女の気を引いたのが、地元クラスメイトさえ近寄りがたい様子の寡黙な美少年エドワード・カレン。そしてある日、事故に巻き込まれたベラは、エドワードに人間離れしたパワーで助けられる。果たしてエドワードは何者なのか…?

悩める物憂げな美少女が心機一転にと転校したら、ミステリアスなイケメンと恋に落ちるなんて、まるで少女漫画の世界。
そこにホラーというよりもファンタジーな要素をプラス。
「吸血鬼と人間の恋は成立するのか?」という命題である。
ロミオとジュリエットの昔から、恋は障害があるほど燃え上がるものだが、本作の場合は男の正体が人間ではないという、これまた漫画のような設定。
明らかにティーンの女の子向けだが、なかなか切ないラブストーリーの佳作だ。

やたらと色白で見るからに周囲の男子とは違う訳アリの雰囲気を持ったエドワードと、たまたま授業で隣り合わせになったベラは、エドワードから拒絶の態度を示され、理由も分からないまま、その後も自分を避けるようになったことに当惑する。
出会いは最悪の印象だ。

だが、ある日、ベラは校内の駐車場で、凍った地面にスリップした同級生の車に押しつぶされそうになったところを、寸前でエドワードに助けられる。
だが、素手で車を止める力と間に合うはずがない位置に彼がいたことからベラはエドワードが人間なのか?と疑問を持つ。

そして、これまでと打って変わって親し気に接するようになったエドワードに、ますます混乱すると同時に、その二面性に惹かれていく。
周囲には見せずに自分だけに見せる素顔。
いわゆるツンデレというやつだ。

そしてある時、友人らと出掛けたビーチで、地元の幼なじみと再会したベラは、彼らネイティブアメリカンの狼と冷人族の伝説を聞いて、エドワードの正体に気づく。
ベラに追及されたエドワードは、自分がヴァンパイアで、カレン家の人々は動物の血を飲むことで人間と共存する道を選んだ一族であることを告白する。

捨て身で命を救われ、誠実に家族を紹介されたベラは「自分は大切にされている」と、あっさり恋に落ちる。

考えてみれば、ベラを背負って森を飛び回るほどの強靭な肉体と美しい顔を持ち、おまけに不老不死だ。
吸血鬼映画にエロスの香りがするのは、吸血行為が性行為を連想させるからなのだが、エドワードは自制心が強く、ベットの上でイチャついても、安易にベラに手を出すことなどしない。
性欲に負けて狼になる人間の若者より、こっちのほうがずっといい、と女の子にとっては理想の彼氏に見えるだろう。
男として見習うべきものは多い。

ヴァンパイアが人間に手を出すということは、即ち血を吸って殺してしまうか、同族にしてしまうということ。
自分を大切に思い、自分を守ってくれる彼と永遠に一緒にいたい…などと女性なら浸ってしまうに違いない。

愛しているから、永遠に一緒にいたいからヴァンパイアになることを望むヒロインのベラ。
片や、愛しているから、苦しめたくないからヴァンパイアにはしたくないエドワード。
「愛しているから」お互いを気遣うという設定がとても切ない。

貧富の差、身分の差、人種の違いなどなど…、恋愛ものの障害は数あれど、人間と化けものの恋愛とは障害が大きい。

そもそもエドワードの種族は、人間を食って生きるモンスターだ。
ベジタリアンのように「人間の血は吸わない」と宣言しているものの、本来ベラは彼らにとって食料である。
ベジタリアンの肉食獣が羊に恋するようなもので、客観的に見れば間抜けですらあるのだが、なにしろベラは美少女だ。

美しい者が美しい者に恋をする。
要するに「“美しさ”は正義」なのである。
この恋する2人のルックスが悪かったら、ここまでロマンチックな絵にはならないだろう。

主演の美男美女に加え、脇役陣も魅力的。
ヴァンパイアの種族同士の争いや、ネイティブ・アメリカンの幼馴染の存在は、パート2以降に動き出しそうな予感がする。
キャラクターがしっかりしているから、続編が作られるのも納得だ。

残念なのは、続編ありきの作り方ゆえに「恋人同士になりました」以外は、全てが思わせぶりで終わること。

この恋が成就するには、ヴァンパイアが人間になるのは無理そうだから、人間がヴァンパイアになるしかない。
そこに種族間の争いや奪い合いが絡むのだろう。
続編の内容の大方の予想はついてしまう。
本作のプラトニックなロマンスに、続編でアクションが加われば興醒めだろうとも。

それでも「人間を辞めてでも理想の恋に生きるわ」と、女性ファンは障害のある恋に自分を重ねてのめり込むのだろう。
先行きの不安が想像できるからこそ、恋人同士となった2人に幸多かれと願ってしまう。

個人的には、はっきり言ってベラの家族以外の脇役はどうでもいい。
転校先に馴染めないベラの孤独感と、同族から孤立するエドワードの孤独感があれば、引き寄せ合う引力が生まれたはずだ。
化け物同士の戦争アクションは「アンダーワールド」シリーズあたりに任せておけば良い。
禁じられた2人の恋の心の揺れ動きや葛藤だけで、充分に見応えのある作品になったと思う。
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