順慶

aftersun/アフターサンの順慶のネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

まず「aftersun」の意味を調べてみたら、コスメ用語として「日焼けした後のお手入れやそれに使うアイテム」とあった。確かにサンオイルを塗っているシーン何度かあった。

で、この映画のポスター。四つ折りにして広げたようなイメージ。娘と父は切れている。右のコピー「最後の夏休みを再生する」。その「を」が切れている。横に破ってつなげているようなポスターイメージ。

で、やっぱり「最後」だったんだ。
ビデオテープを再生しているのは、31歳になったソフィ。大好きだった父とのトルコのバカンス。
再生しながら思い出している。

映画はほとんどずっと親娘のバカンス。何かが起きそうで、大した事件も事故もない。でもなんか不穏な感じがずっとする。

まず、なぜか父が腕を骨折して石膏で固定している。途中で取るわけだけど、その説明はされない。
で、太極拳のような変な動き。

絨毯屋のシーンの音楽がどういうかわけか不穏。
プールに潜ったり、スキューバで水中マスクを落として潜っていったり、なんかイヤな感じがする。
ソフィを探しに夜の海へ行く父。波の音が恐ろしかったり。
断固としてカラオケを歌わないのに、最後はソフィにダンスに誘ったり。
父の誕生日にサプライズでツアー客みんなで歌を歌っても父は暗い表情だった。

カメラの構図はずっと変。鏡やテレビ(ブラウン管)や机の反射もあったか。直接、人物を映さないシーンが多かった。

父は自分が長くは生きられないようなことをスキューバのインストラクターに話していた。未来のことは話したがらない。
11歳の誕生日のことはトラウマになっている。ソフィのやさしい「私の心のカメラに残すから」というセリフにグッときた。

お金がないことは示唆される。食い逃げしてたような。絨毯は結局買ったけど。
とはいえ、ソフィとっては楽しい夏休み。大人のマネもしたし、ちょっと恋もあった。だからそこ父の変化に気づけなかったのかもしれない。

そしてラストシーン。
大人になったソフィが見ているのは、カメラの電源を切って、別れた父の姿。誰もいない不自然な通路。父は扉の向こうへ行ってしまった。

ポスターのコピーに戻る。やっぱり「最後の夏休み」。父は自殺したのだろう。
順慶

順慶