このレビューはネタバレを含みます
昨今、思考を促すような強いメッセージ性のあるもの、作家性、娯楽性の強いものばかりを消費してきた気がする。好きだし、悪くないものだったけれど。
言葉ではいい表せない、この繊細な表現は映画ならではというにふさわしい。これが映画なんだというのを強く感じたのがこの映画だ。
ダイビングのシーンで
ソフィがパパは大丈夫、というのが印象的だった。
そういえば子供の頃、親は万能だと思っていた。歳を重ねていけば大人だって悩んだり苦しんだりするとわかるのに。
映画ならではの色彩、余白と構図の素晴らしさも印象に残る。
まずビジュアルについては
ファッションが直近でYouTubeで観てたマルニの春夏コレクションのような色彩や柄で兎に角素敵だった。
構図は美しく、工夫やアイデアに満ちている。
バスルームの青い部屋の父親とベッドルームのあたたかい色のなかのソフィの対比。
電源の入ってないブラウン管テレビに映る親子。影のなかのふたり。
父と子の対比、子供時代と大人のソフィの対比を色彩の違いで表現して
好奇心と未来の希望に満ち満ちた子供と
居場所や未来はあるのだと無理矢理言い聞かせている大人のまさに「太陽のあと」だと思わされる。
ひとは絶望を度々感じるに従って
視野が狭まり
希望なんて自分にはもう無いんだと思い込んでしまう。
希望がひとの生死をわけると言っても過言ではない。
ふたりが別れたあと、父親の消えた先には希望はみえなくなったのかもしれない。