景

aftersun/アフターサンの景のネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

クリストファー・ノーランが好きな映画として挙げていたので鑑賞。基本的には父親と娘のトルコでの刹那的な夏休みを描いていて、劇的な何かが起こったりはしないけど、最後まで退屈を感じることはなかった。いい映画でした。楽しそうな二人の時間の中に不穏な要素も挿入されるし、カラムも情緒不安定で何かがあるんだろうと分かるけど、それは最後まで曖昧にされる。けど、その曖昧さが気にならなかった。楽しい時間も不穏な一瞬もわざとらしさがなく、自然に見られたのが良かったのかもしれない。父親と娘の距離感も、いい時も気まずい時も含めて絶妙だった。キャストが良かったのだと思います。

あと映り込みを意識したショットや長回しが多く、映像が鮮烈だった。特にソフィがカラムにインタビューする時の、鏡の映り込みとテレビ画面の映り込みが入る計算された撮影がすごい。他にもカラムの右手のギプス、何度も登場するプール、親子で塗り合う日焼け止め、落とした高価な潜水マスク、高価なペルシャ絨毯、ドロドロの硫黄温泉、気まずいカラオケ、見知らぬ客とのビリヤード、少年とのレースゲームとキス、カラムが迷いなく入っていく夜の海など、いずれの要素もなんらかのフックになりそうでいてその後のストーリーに強く影響しない。なのに妙に記憶に残っています。

あと背中が印象に残る映画が好きなんだけど、この映画もそれぞれの場面でのカラムの背中が良かった。敢えて多くを語らない作品だから尚更で、特にラストのレイブパーティの会場へと戻っていく物悲しい背中が好き。
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