お豆さん

イタリア旅行のお豆さんのネタバレレビュー・内容・結末

イタリア旅行(1953年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

私にとってのイタリアは、やはり南イタリアだ。食べて、飲んで、太陽を浴びて、昼寝して。そういう非日常がロンドンの忙しい日常に慣れたイギリス人夫婦を「退屈」にさせたのだろうか。ナポリには「楽しみ」がないと文句を垂れる夫とは対照的に、いそいそと歴史的名所を歩き回る妻。非日常の中で明らかになった2人の間の溝は、どうしようもなく開くばかり。それでも「ナポリを見て死ね」とは良く言ったもので、この大都市の持つ生々しいエネルギーは、非日常のさらに先にある一種の熱狂へと2人を連れて行く。

単にイタリアの観光名所を巡っているように見えるけれども、そこに妻の感情の変化がうまく組み合わされている。まずは当たり障りのない考古学博物館から始め、秘儀が行われていた古代遺跡、今も燃えたぎる火山、中世の奇妙な風習の残る教会、そして火山灰に埋もれたポンペイから突如として現代に蘇る死者たち。徐々にかき乱されていく妻の心は、現代のナポリで今まさに行われている宗教行事を前に振り切れる。ディープなナポリを知るにしたがい、どんどん深みにはまっていく、というのは深読みしすぎだろうか?

それにしても2000年代のナポリも十分ぶっ飛んだエネルギーに満ちあふれた都市という印象だが、50年前のナポリはさらに数段ぶっ飛んでいたんだろうと想像すると、どうしてもタイムスリップしたくなる。

あ、それとイギリス人のスパゲティの食べ方!

2016. 22
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