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マンティコア 怪物のMrOwlのレビュー・感想・評価

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)
3.7
タイトル、パンフレットの色遣い、主人公の男性が別の表情で2重写しになっていること、特徴的な髪型の女性、心惹かれる要素が多く、シネマート新宿にて観賞してきました。
ゲームのモンスターデザインを担当するフリアンは、どちらかというと控え目で、やや神経質なところも垣間見える人物です。
同僚の誕生日パーティーで、特徴的な髪型のディアナと知り合い、どこかミステリアスなディアナに惹かれていきます。
フリアン役のナチョ・サンチェスさん、ディアナ役のゾーイ・ステインさん、いい役者さんですね。フリアンの内気で神経質ながら鬱屈した欲望を抱える表情や言動がリアルに感じました。

説明的なセリフが少なく、かと言って抽象的なセリフというよりは、平易なセリフで構成されているので(翻訳が良いのかも知れません)、本作の特徴である人物の表情や仕草で内面を読み取ることに集中でき、演技の妙を堪能できる作りになっていると感じました。

サスペンス、スリラー要素は抑えめなので、そうした演出を期待して観ると、ちょっと物足りなく感じるかもしれません。
ただそうした演出を抑制しているが故に、徐々に歯車が狂い始めた終盤の展開は、緊迫感と恐怖感が際立っているとも言えます。
フリアンの内面のマンティコア/怪物だけでなく、ナディアに潜むマンティコア/怪物も露わになった(と感じました)最終盤の展開も良かったです。

その他の見どころとしては、スペインの首都マドリードの街角の日常的な雰囲気、石畳の道路、アパートメントの造り、など異国の雰囲気を感じられるのは海外映画の楽しみの一つですね。
またゲームのキャラクターデザインの仕事の様子が垣間見られたことも良かったです。VRのようなギアでデザインしている様子もギア好きの自分としては、興味深く見てました。
さらに、随所に日本に関するものが登場します。同僚の旅行先の北海道の話題、ランチでテイクアウトする寿司、ベッド脇に置かれている黒と金のダルマ、など。調べてみると監督のカルロス・ベルムトさんは大の日本好きらしいです。「日本文化は僕の血肉」と語り日本の漫画、アニメ、映画をこよなく愛するほどだとか。そういえばフリアンの携帯の着信音も「魔界村」でした笑。

最後に余談です。タイトルにもある「マンティコア」は、西ヨーロッパの中世美術にも広く普及した、エジプトのスフィンクスに似たペ ルシア(今のイランの辺りの地域です)の神話上の生き物。人間のような頭、ライオンまたは虎のような胴、ヤマアラシの羽に似た有毒な棘の尾もしくはサソリの尾を持つ怪物で 、人喰い(マンイーター)と伝えられる怪物です。
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