茶碗むしと世界地図

マンティコア 怪物の茶碗むしと世界地図のネタバレレビュー・内容・結末

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 2022年製作のスペインとエストニア合作の作品である。

 宣伝の「衝撃のアンチモラル・ロマンス」というキャッチコピーはなんだかピンとこないところはあるが、見終った時の印象はあまりそれとズレてるようなことはなく、なかなか面白いところがある作品だと思った。

 フリアン(ナチョ・サンチェス )がどうせ高転びするだろうという予想は立てられるのだが、主軸をそっちにはせず、フリアンとディアナ(ゾーイ・ステイン)のロマンスに焦点にあてた構成がまず良い。2人の恋情が満たされていく様子をかなりじっくり描いていて、地味だが丁寧な作りである。フリアンがしょうもないダメな奴というよりはふつうの優しそうな兄ちゃんで、けっこう同情的に描いているところが本作はちょっとズルい……というか、やったことは倫理的に当然問題はあるが見ている我々はフリアンを簡単にジャッジしていいのか?というようなことを考えてしまう。おそらくこういう効果を狙っての構成なのだろうし、全体的に人間の善行と悪行、両方の行いの理不尽さが生々しく描き出されていて、えらい意地悪な映画だなと思う(褒めてるつもり)。
 とはいえ、終盤のフリアンの自罰的な行動は唐突な印象を受けるし(ただのショッカー演出に見えてしまう)、劇中のフリアンの行いの観点から考えると不均衡がある気はする。ディアナの父親がわりとなったのだみたいなラストもそれでいいのだろうか……と思ってしまうところもあった。