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こんにちは、母さんのtakaのレビュー・感想・評価

こんにちは、母さん(2023年製作の映画)
3.9
日本映画界最年長の山田洋次監督が第一線の巨匠であることが証明される佳作。貧富の差が広がる今日、自分を捨てて大企業の論理に生きようとするもののそれに従いきれないエリートの悲喜こもごもを大泉洋が熱演。一方、東京大空襲の孤児として生き抜いてきたホームレスを田中泯が相変わらず存在感を出していた。この矛盾した社会に信仰の立場で弱者に寄り添おうとする牧師の寺尾聰も上手い。(おそらく北九州でホームレス救済活動を続けている奥田知志氏がモデルだろう。)
こうした芸達者の登場人物の中で下町の人情あふれる吉永小百合のおばぁちゃんたちのホームレス支援が矛盾なく繋がってくる。おばあちゃんと父親の間を取り持つ孫の永野芽郁が生き生きしているのもいい。山田監督は、離婚した大泉の妻を画面に出さず、妻の決断を批難することはしない。それぞれがそれぞれの人生を背負って生きていく姿にエールを送る。千住明の音楽と千住真理子のバイオリンによってラストに一層心優しい余韻を残す。
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