JunichiOoya

たまねこ、たまびとのJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

たまねこ、たまびと(2022年製作の映画)
4.0
『東京干潟』『蟹の惑星』その後、というか多摩川連作3本目といって良いのでしょう、猫や小西夫妻を素材に村上浩康さんの目に映る多摩川を追体験する映画。

前2作に加えて多摩川源流への遡上があるし、何より蟹やシジミに比べてねこたちは相当に雄弁。淡々と虚無的な表情でいながら、蒙ってきた飢えや虐待のあれこれをやたら語りかけてくるのに圧倒される。

そもそも村上さんは、ほとんど偶然のようなきっかけで多摩川にカメラを向けたと以前仰っておられた。
「なんかおもしろそうだな、映画になりそうな気がするな」と多摩川の干潟にカメラを向けていると、誰かが話しかけてきてそして映像ができあがっていったと。

その過程に4年なり5年なりの「年季」をかけることで作品が「発酵」し、育っていくような。

そういう奥行きがスクリーンから見えてくるのが村上さんの映画で、それって巷に溢れるドキュメンタリー映画で、そうしょっちゅう出逢える楽しみではない、とっておき感もあるんですよねえ。

ねこのこと、小西夫妻のこと、河川敷で暮らすおじさんたちのこと、小西さんに教えられて村上さんが買った自転車(屋さん)のことなどなどは、皆さん色々お書きになってると思うので、私はザクっと輪郭みたいなことをと思いまして。

そういえば自転車の話。村上さんはGoProとか使われたんだろうか? 小西さんの自転車を追いかける村上さんを追いかける、そんな映像で撮影風景を覗いてみたくもなりました。
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