みりお

君に幸あれよのみりおのレビュー・感想・評価

君に幸あれよ(2022年製作の映画)
4.0
かんっぺきなバランスで、一切の無駄がない作品。
これだけの葛藤と弱さと人情を、たった78分に収めて、観る人に真司のことも理人のことも好きにさせるのが凄すぎる。
自身は本来ヤクザものは苦手なはずなのに、あっという間に魅了された。
核心を語らず、ブラックアウトや後ろ姿だけで、物語の展開を理解させる手法に、心がぐいぐい引っ張られる。

そしてキャラクターもとても魅力的。
ドライで、切れ味の鋭いナイフのような真司と、人懐っこくて、どんな感情も温かく受け止めてしまう理人…正反対の二人なのに、パズルのピースがカチッとはまったように受け止め合う二人が本当によかった。
序盤は理人のことを理解できる気がしないし、こんな奴と仕事できないって思わせられるのに、真司の髪型を真似てみたり、服をもらって喜んでみたり、隣にピタッとくっついて座ってみたり、そんな理人を観ているうちに愛おしくなり、視聴者は真司の想いを、まんま体感することになる。
だから後半、衝撃の展開に見舞われた理人を思うあまり、暴走しかける真司の想いも痛いほど伝わってきて、観ている側は臨場感のある感情を味わえる。

エンドロールからのラストのシーンは、自分史上5本の指には確実に入る、最高の映像✨
後ろ姿だけで全てを語り、観る者の心を揺さぶる映像は、これまで観たことがない。
あのエンドロールを観るためだけに、この作品を観ると言っても過言ではないかも。


【ストーリー】

債権回収などで生計を立て、巷では狂犬と呼ばれている真司(小橋川建)。
舎弟を亡くしたことをきっかけに他人に興味を持たないようにしていた彼は、理人(高橋雄祐)という不思議な青年と出会う。
彼と一緒に過ごすうちに、感情をなくしかけていた自分が変わりつつあることを感じる真司だったが、真司が過去に起こしたトラブルが原因となって、理人に危険が迫る。
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