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あしたの少女のいののレビュー・感想・評価

あしたの少女(2022年製作の映画)
4.0
全従業員数670名
年間退職者数629名
年間採用者数617名


上記数字だけで、どのような労働環境か おわかりいただけると思う(あまりの数字に自分の目を疑い、後から戻して再確認しました)。働き手確保の為に、企業は高校生を採用する。韓国の実業高校に通う生徒たちは、実習という名の下に雇用関係を結ぶ。企業と癒着関係にあるに等しい高校は、高校生の訴えに耳を貸そうとしない。高校生はどんなに劣悪な環境でも容易には辞めることができない(辞めると高校生活を続けることも難しくなる)。搾取され放題


にしてもオトナは狡い。子が苦しんでいるのを見て見ぬふりをする親。補助金のこともあり、生徒よりも企業との関係を重視する学校。職場については言うまでもない。苦しんでいる高校生の心情をわかろうとするオトナは、先に自身が潰れてしまう。


高校生の主人公ソヒ(キム・シウン)は、まんまるな瞳がくるくる動いて、ダンスしてる姿はとっても楽しそう。生き生きとしている姿を、観ているこちらは心に焼き付けたくなる。


で、ペドゥナです。復職したての警察官というのだから、どうしたって「私の少女」のその後を想像しながら観てしまう。ペドゥナが、この問題に切り込んでいくわけだけど、ペドゥナは真っ向勝負しようとしていくので、これは女性監督の元での女性が主人公の映画だと痛感する。〝熟練警官の手練れ感〟皆無。駆け引きなし。あまりにもペドゥナが背負い過ぎていて、それはペドゥナじゃなくジャーナリストが登場して担ってくれたらいいのに、とも思った。ペドゥナは監督の同志ですね、きっと。


ケン・ローチの『家族を想うとき』の息苦しさに匹敵するような今作。社会問題に真っ向から挑んだ作品だと思う。この映画の公開後、この問題に関する韓国の法整備等々が前進したとのこと。映画はそういった役割も担っているんだとしみじみ。事実(事件)に想を得て創られた作品とのこと。これは他国の話だから関係ないと決めつけることはできない。繋がっている。




*Filmarksオンライン試写、有難うございます!
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